経営者の世界は経済界と呼ばれることもあり、経済に非常に強い人たち、という印象があるかもしれない。そうした人たちに経営のアドバイスをする経営コンサルタントもしかりだ。彼らは確かにカネ勘定には強そうである。また彼らのやっていることが、個別経済主体の行動を分析するミクロ経済学と親和性が高いのも事実だろうし、実際にその成果を経営に取り入れているのだろう。
しかしマクロ経済政策の観点からは、彼らの主張はどうも財政規律と規制緩和に偏り過ぎるきらいがあり、正しい主張をしているとは考えにくい。とくに、経済同友会の歴代代表幹事の主張に、そうした偏りを強く感じる。彼らは経営のプロであって、マクロ経済運営のプロではないという点を強調したいと思う。
(1)政策目的をはき違えている
マクロ経済政策の目的は、なるべくたくさんの労働力を活用し、最大限の付加価値を生み出すことだ。そして経済弱者が自力で生活できるようその付加価値を分配することである。翻って、経営者と経営コンサルタントにとっての正義とは、競合他社を蹴落とし、労賃を含むコストをなるべく減らし、利益を最大限にまで増やすことにある。それが市場原理なのだから、私はそのこと自体を否定しようとは思わない。しかし、こういう強者の論理しか知らない人たちが、広く国民の利益になることを言うだろうか?この人たちの意見を聞いても、市場原理の徹底で強者がさらに勝てるようにする世の中がいい、と言うに決まっている。年収何千万円、何億円の人々が、さらに勝つ世の中にしてどうするのか。
この誤解は、まさに日本経済がたどってきた需要不足の状況と整合的だ。勝ち組経営者や外資系経営コンサルタントの年収はうなぎ登りだが、消費性向が高い多くの国民の年収は低迷し、経済は伸び悩むわけだ。
(2)合成の誤謬とシニョリッジを理解していない
合成の誤謬についてはこれまで何度か説明してきたが、再度繰り返したい。資産価格下落等により毀損したバランスシートを、経費切り詰めで健全化しようとする動きのことであり、個々の経済主体にとっては合理的な行動である。ここまでは、むしろ経営者や経営コンサルタントが強い領域だ。しかし企業や金融機関が一斉にこれを始めると際限なく不況が続いてしまう。だから政府が国債を発行して財政政策により需要を喚起する必要があるわけだ。国債は、他に誰も買わなくとも、政策協定を結んで日本銀行が買えば良いから、実質的に借金ではなく通貨発行益(シニョリッジ)の行使と同じことである。このシニョリッジの行使こそが、経営者や経営コンサルタントにとっては守備範囲外だ。
政府債務や財政赤字を垂れ流していいのか?結論としては、そんな指標に全く意味はなく、他のブログで述べた通り、まずは経常収支と対外純資産をみればいいのである。今の日本のように、膨大な経常収支黒字を抱えながら財政規律を叫ぶのは異常だ。
経営者の目線でみても、マクロ経済政策の分野では間違った結論しか出てこない。経営者や経営コンサルタントを政府の審議会等に呼ぶときは、本当に妥当か、政府は内容と目的をよく考えるべきだ。またマスコミに彼らが登場してきたときは、決してマクロ経済の専門家だと思って彼らの主張を聞いてはならない。分野が違うのである。

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