食べ過ぎを恐れて栄養失調を続けるべきだと言う人たち

マクロ経済(基礎編)

積極財政の貨幣観を解説する資料を作成しました

 食べ過ぎると胃腸が不調になることを恐れ、栄養失調状態を続ける人などいないだろう。多少食べ過ぎても重大な疾病に至ることは通常ないのだから、胃腸の不調なんか実際に満腹になってから考えればいいのである。逆に将来栄養失調に陥ることを恐れ、常に気持ち悪くなるほどたくさん食べる人もいるまい。食いだめできる量などたかが知れているのだから、そこまでシャカリキに食べても胃腸を悪くするだけで無意味だ。将来的な栄養不足への対応としては、食いだめ以外の手段を考えるべきだろう。火傷を負っても凍傷が怖いから冷やすなという人も、逆に凍傷を負っても火傷が怖いから暖めるなという人も通常いない。そんなことは当たり前である。
 翻って経済論壇では、どうにも不思議なことを言う人が結構多い。しかも、大学教授、チーフエコノミスト、日本銀行審議委員、国際機関幹部など、私のような末端の人間には遠く及ばない御大層な肩書を名乗っているから厄介だ。彼らは、日本がこれほど長くデフレに苦しみ、そして今も2%の持続的CPI上昇という目標を実現できる見通しが立たないなか、それでもなおインフレを警戒して積極財政政策は危険だと吹聴しているのだ。これは金融政策のデジャブで、量的金融緩和などの非伝統的金融政策はハイパーインフレを招くとの批判を受けたことがあった。無論、非伝統的金融政策が市場機能をマヒさせるなどの悪影響をもたらしたことは否定しないが、インフレ促進効果など微々たるものだった。
 偉い肩書をもって経済専門家とされる人々が、インフレが低過ぎることにはとことん無頓着で、インフレが高過ぎることの問題だけを殊更に主張するから、30年も賃金がろくに上がらない経済になってしまったのではないか。一般有権者は、まさかこれほど偉い人たちが間違ったことを言っているとは思わないだろう。
 それに、何重もの防御壁があるため、日本がハイパーインフレに突入することなどほぼあり得ない。インフレが起こったら、日本銀行がインフレ抑制策を採ればいいというだけのことである。植田総裁はインフレ警戒姿勢が強く、リスクはないと言っていいだろう(注:私は当初、バランスの取れた見方をできる人として植田総裁の能力を高く評価していたが、徐々にインフレ警戒が行き過ぎた人物との見方に変わってきている)。この点はまた機会を改めたい。
 ちなみにこれまでの日本銀行総裁は、私にはどうしても納得できない発言を何がしかしてきた。私は景気浮揚に努めた黒田前総裁を基本的には評価しているが、「持続可能な財政構造の確立は、日本経済が持続的に成長していく上での前提」「日本が国全体として取り組まなければいけない課題」という発言はいただけない(ロイター「黒田日銀総裁、持続成長へ財政再建と成長戦略の重要性訴え」2016年5月25日)。財政再建が大事だから金融政策に行き過ぎた負荷を負わせたのだとすれば、これは大失敗だったと言える。この問題についても機会を改めたい。

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