「若者が投票に行かないから、高齢者ばかり優遇する自公政権が続いてしまう。若者はもっと選挙に行くべきだ」という論調が、ちょっと前のネット上ではしばしばみられた(最近はやや減ったように見える)。自分はほぼ見ないのでわからないが、テレビでもそうした論調はあるのだろう。高齢であればあるほど手厚かった社会保険の恩恵を受けており、その後どんどん改悪されているのは事実だ。だから「高齢者のために貢がされている現役世代が高齢者になるときは、社会保険制度はさらに改悪されて全くわりに合わない、高齢者なんかにおカネを使うぐらいだったら、もっと子育てや若者に恩恵のある政策におカネを使って欲しい」、こんな論調がウケるのだろう。
そして自公政権は、景気対策としてしばしば、住民税非課税世帯を対象とする一時金を支給してきた。住民税非課税世帯には高齢世帯が多い。コロナ禍後の物価高騰ではほとんど全世帯が苦しんできたわけで、税金を納めている人たちに何の恩恵もないこうした措置に対しては、ネット上で厳しい批判が沸き起こった。一方で、家計金融資産の6割を60歳以上が占めていると報じられており、現役世代の怒りは頂点に達したというわけだ。一部オールドメディアは、高齢者から若者に金融資産を移転せよと大真面目に論じている。このようにして高齢者叩き、世代分断が勢いをもってしまった。
しかし冷静に考えて欲しい。現役世代の人々は自分たちは年をとらないとでも思っているのだろうか?このまま安心して老後を迎えられるのだろうか?高齢者だって社会保険改悪の被害者であり、その被害の大きさは甚大なのだ。高齢者、とりわけ70代後半以降の人たちは、「政府からろくな支援もない中で子供を育て、親の面倒もみる」のが当たり前の時代を生きてきた。彼らがこうして努力してきたからこそ、今日の日本があるわけだ。ところが、自分が育てた子供たちは親の面倒をみようともせず(あるいは歴代政権の失政により親の面倒をみる経済的余裕もなく)、政府は年金制度や健康保険制度について改悪に改悪を重ねたうえ消費税率を引き上げ、自分たちの老後計画がすっかり狂ってしまった。現役世代のように、新NISAやiDeCoで将来に備える時間も与えられなかった。そのうえ、新旧メディア(ネットメディアや保守系ユーチューバーの多くも同罪である)から袋叩きにあい、たかだか80万円程度の老齢基礎年金を与えられて勝ち組扱いされている。そして、ほとんどの高齢者が亡くなっているであろう、20年も先に成人する子供を育てるための支援金まで徴収されるという。こんな酷い話があるだろうか。
しかも、私のブログを全部読まれた方はお分かりになるだろうが、「高齢者は若者におカネを貢がせている」のではなく、「若者に世界最大の対外純債権という偉大な資産を残した」のである。だから財政政策により純債権を取り崩し、彼らに報いればいいというだけのことなのだが、マクロ経済政策がまずいので未だに経常収支は大幅な黒字になっている。これは高齢者のせいではなくて政府のせいだ。高齢者を批判するなど筋違いも甚だしい。
高齢者を批判する人はまず、「おカネは有限」という間違った認識を正さなければならない。おカネは使ってもなくならないわけで、高齢者が安心して使えるようにすれば現役世代にもおカネは回るわけだ。しかし、上記したような厳しい環境下で将来不安が死ぬまで続くため、高齢者がおカネを使えなくなったのだ。高齢者を叩いても、ますますおカネを使わなくなるだけだ。こんな世の中になったのは誰のせいか。社会保険の改悪は直ちにやめなければならないどころか、むしろ拡充が求められる。そうすれば、高齢者は安心しておカネを使えるようになるのだ。
高齢者の不安を解消できないとしても、おカネは有限ではないのだから、国債を発行して子供子育て支援でも若者の起業支援でも別途やればいいとしか言いようがない。おカネはいくらでも作れるのである。高齢者からおカネを奪い取っても、将来不安が深刻化するだけだ。
高齢者叩きに限らず、世代分断を狙った意見は基本的に間違いと思った方がいい。悪いのは政府のマクロ経済政策だ。


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