マーケット予測は実質的に無理~ゴールドマン1ドル=100円説の妥当性

マクロ経済(基礎編)

 安易な利上げは許さない姿勢を示す高市政権の発足により、ドル円はやや安値に振れた。執筆時点で1ドル=152円程度となっている。こうした中、10月28日にブルームバーグは、「ゴールドマン、円は1ドル=100円に回帰へ-向こう10年間の金利上昇で」という記事を掲載した。この記事には次のように書いてあるが、さてどう評価するか。

 「政策金利が『徐々に正常化』する」
 「『アベノミクス』への回帰が見られるとしても、『インフレが政治的に不人気であることを踏まえると、その動きはかなり穏やかなものにとどまる可能性が高い』」

 私の基本スタンスは、「マーケットなど予測できるわけがない」というものだ。マーケットは現在公表されているすべての情報を織り込んで形成されているので、インサイダー情報を持たない限り先回りして儲けることはできない。これは経済学の基本的な考え方であり、一部マクロ経済学の教科書にも載っている話だと思う。予測をやっている市場関係者やエコノミストたちも、顧客やメディアから求められているから、あるいはマクロ経済予測の前提として必要だからやっているのであって、おそらく本心では当たるとは思っていない。上がる下がるの二択であれば、2回に1回は当たるとも言えるが。ついでに言えばマクロ経済予測も、マーケット予測よりはましだが、そうそう当たるものではない。

 このブルームバーグ記事のように「向こう10年」なんて議論を持ち出したら、それこそ何でもありだ。IMFによると購買力平価の為替レートは1ドル=93.52円だそうだから(2025年10月29日にIMFウェブサイトにアクセス)、10年以内に1ドル=100円なんていう話は当然にあり得るので、そもそも予測と呼ぶに値しない。
 また、仮に円が今後も安値放置のままだったとしても、10年経たないと結果はわからない。結果が出ても、この筆者が10年前に何を言ったかなど誰も覚えていないだろう。

 さて前置きが長くなったが、高市政権の誕生で金利が低めに抑えられ、当面の円安要因となるのはそのとおりだろう。しかし、財政出動で経済が正常化すればインフレ圧力が高まるので、財政規律派の政権が続くよりは、将来的な金利水準はむしろ高くなるはずだ。それを正常化と呼ぶのであれば私もこのシナリオに大筋で賛成だが、それが「10年以内に1ドル=100円」に繋がるかどうかなどわかるはずがない。
 「インフレが政治的に不人気」のくだりは余計で、金融政策ではなく財政政策が政策の主軸になるからこそ、むしろ将来的な金利上昇圧力は増すと理解すべきだろう。高市政権は金融政策に過度に依存したアベノミクスの轍を踏もうとはしていない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました