オールドメディアやそこに登場する学者などの専門家の意見だけを聞いていると、トランプ氏は、気まぐれで横柄で滅茶苦茶なことをする、とても大統領の器とは言えない人物のようだ。しかし、そうした分析はお世辞にも鋭いとは思えない。トランプ氏は言うことと腹の中で思っていることが違うので、表面的な発言だけを論うのは間違いだろう。その点、保守系のYouTubeの番組をみると、トランプが何を考えて行動しているのか、きちんと解説してくれる。きちんと取材し、独自情報源を持っている評論家やジャーナリストも多い。両方見た上で各自が判断すればいいと思うが、私はどちらかと言えば後者の方が信用できるという立場である。
もっとも、トランプ氏のやることがすべて綿密に計算しつくされているかというと、個人的にはそこまで賢い人物とも思っていない。とりわけマクロ経済に対する見方がちょっと異様である。アメリカはコロナ禍後の景気刺激で、長く高インフレに直面してきた。2024年後半以降の消費者物価指数は総じて前年比3%以下で推移するようになっているが、それでも目標の2%を上回っている。私が景気過熱を示す指標として再三重視してきた経常収支の赤字は、GDP比で約4%だ。基軸通貨国ゆえ経常収支赤字は他国よりも小さな問題ではあるものの、それでも結構な水準になってきた。つまり、これ以上の成長加速は難しい、言い換えれば国内生産の増加ペースをこれ以上引き上げることは容易ではないと考えるのが常識的な判断だろう。これに対し、トランプ氏は、関税引き上げ、減税、外国人労働者の流入規制、FRBへの利下げ要求とインフレ促進策ばかり掲げている。こんなことをしてもインフレを加速させるだけで、国民は豊かにはなれない。
筆者は、国債をバンバン発行して日本政府は積極財政をやれと再三言っているが、そんな論理は常に成り立つわけではない。日本経済が需要不足から抜け出せていないと総括しているからこそそう主張しているのである。経済がどのような局面にあるかをきちんと見極めることが大事で、常識的に判断すればトランプ氏のマクロ経済運営は危険だ。トランプ氏が口先だけでなく、本当に景気刺激を全面的に推し進める場合、次の世界的な経済危機は米国発となる恐れがある。これが私なりの一応の結論であり、だからこそ日本は内需主導の経済に早く移行すべきだと思う。
ただし一方で、2%のインフレ目標が実は過少で、アメリカ経済はより高い成長を実現する潜在力を持っている、というのであれば結論は異なってくる。筆者はアメリカ経済の専門家ではないので、この点については特に意見はない。というか、わからない。今後数年のアメリカ経済をみれば、その答えは出るのだろう。


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