経済財政諮問会議は3月26日、いずれも元IMFチーフエコノミストのオリヴィエ・ブランシャール氏とケネス・ロゴフ氏を招いた。ロゴフ氏はオンライン参加である。著名経済学者の招聘は、安倍政権下の2017年におけるジョセフ・スティグリッツ氏以来だという。スティグリッツ氏はノーベル経済学賞の受賞者だが、ブランシャール氏とロゴフ氏も常に有力候補とされており、経済学界の重鎮と言える。また3氏ともマクロ経済学の教科書の著者としても知られている。
この3人と言えば、新興国エコノミストだった私にとっては思い出深い。1997年のアジア通貨危機に際してアジア諸国に緊縮政策を押し付けたIMFを批判した急先鋒が、当時世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストで積極財政派のスティグリッツ氏だ。これに対し、後日IMFのチーフエコノミスト(2001~2003年)に就任した財政規律派のロゴフ氏はスティグリッツ氏に激しく反論。さらに後にIMFのチーフエコノミスト(2008~2015年)に就任したブランシャール氏は、緊縮政策の悪影響をIMFが過小評価していたことと、IMFの教条主義的な資本移動自由化推奨は新興国にとり問題があることを認めた。
財政・金融政策に関する当時における3者の立ち位置を何となくお分かり頂けたのではないかと思う。当時は、ロゴフ氏よりもブランシャール氏の方が考え方はだいぶ柔軟であった。なお当時の筆者はロゴフ全面支持派であり、IMFが間違ったことを言うはずがないと固く信じ込んでいた。ここではアジア通貨危機にこれ以上は深くは入り込まないので、機会があれば別途論じたい。
ところが今回、どうもブランシャール氏が言っていることは硬直している。要すれば、金利が上がるので財政規律を重視せよ、プライマリーバランスを黒字化せよということだ。日銀当座預金も、付利のある部分は同列に論じろとも言っている。ブランシャール氏と言えば、名目GDP成長率が金利を上回る限りある程度の積極財政は許容されるという趣旨の主張で有名だが、日銀当座預金の付利は税収から払っているわけではないので、名目GDP成長率(税収増の根拠)とはあまり関係ないと思うが。
一方でロゴフ氏も似た認識ではあるものの、ロボティクス産業、エネルギー産業、防衛産業などを育成する重要性にも言及しており、もっと柔軟な主張をしているように見える。アジア通貨危機の際にガチガチの財政規律論者だった時代を知る筆者にとり、これは意外だった。
高市氏が両者を招いた背景にあるのは、おそらく「緊縮派の意見もきちんと聞いてますよ、財政の健全性にも配慮しますよ」というアピールではないか。本心でどう思っているかは知らないが。
ブランシャール氏が言うような緊縮路線に戻れば、日本は再度不況に向かうだろう。金利上昇がこれまでと違うというが、同じくインフレ率も上昇していることに加え、高市政権の高圧経済路線による成長期待があるため、金利上昇だけを切り取って議論するのはおかしいというのが筆者の認識である。ロゴフ氏のように個別の産業政策まで切り込んだうえで、高市氏の政策はダメだと言わない限り、説得力が全くないと思う。ブランシャール氏は無視で良い。

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