日銀の審議委員人事を歓迎する

マクロ経済

 政府は2月25日、日銀審議委員の同意人事案を国会に提示した。野口旭氏の後任として浅田統一郎・中央大学名誉教授を、中川順子氏の後任として佐藤綾野・青山学院大学教授を充てるという。筆者は、今は学術論文は一切読まないし、このお二人の主張をネットメディア等で目にしたこともなかったので正直どのような方かよく知らなかったが、報道を見る限り極めて適切な人選であったようだ。大いに歓迎したい。

 このお二方は報道記事で「リフレ派」と紹介されていることが多いようだが、狭義のリフレ派は「金融緩和により望ましい物価水準の実現を目指す一派」だと個人的には理解している。彼らは財政の出動にも理解をされているようなので、その意味でリフレ派というよりは、流行の言葉でいうと「高圧経済」を目指している方なのだと思う。

 さて、私はどうも市場関係者と呼ばれる人とは話が合わないことが多いが、彼らによると1人はリフレ派でもう1人は中間派を入れると予想する向きが多数だったという。高市氏が利上げに後ろ向きなことは広く知れ渡っていると思っていたので、また筆者は元々新興国エコノミストであり日銀審議委員の選び方などにはたいして興味がなかったので、なぜそういう予想になるのか当初は全くわからなかった。しかし、確かに過去を振り返ると、金融緩和に積極的であった安倍晋三氏すら、中間派を意図的に入れ込む人事をしていたようだ。そして、正に中川順子氏こそがそういう役回りで、政策的に無色透明だったというわけだ。
 いやそんな人要らないでしょ、総裁の方針に賛成票を投じるだけなら誰でもできると思いChat GPTに意見を聞いたところ、「非リフレ派も緩和に賛成しているよ」といったポーズを示すことで金融政策に対する信認が生まれるという。そういうものなのか。

 もっとも今回は全然状況が違う。リフレ派最後の審議委員となった野口旭氏すら、利上げに前向きの発言をするなど、どうみても高市路線に沿っているように見えない。中川順子氏は中間派とされているが、その他のメンバーたるや岸田・石破政権のときに任命された、真逆の方向を向いている人ばかりだ。「コストプッシュインフレ下で積極財政を進める中での金融政策」という非常に難しいかじ取りを、理論的背景がしっかりした人に入ってもらって検討するのは当たり前ではないか。中間派枠などと言っている場合ではないのである。
 中間派を入れるとしたら、高圧経済を目指す勢力が過半を抑えてからではないだろうか。個人名を挙げるのは控えるが、日銀審議委員の有力候補として、高圧経済に理解を示す有名どころの学者がまだ何人かいらっしゃると思う。とにかく、実質賃金も設備投資も言及せずに、ただ単に「インフレだから利上げしよう、そうすれば金融機関も儲かる」というレベルの金融機関関係者を審議委員に入れる必要はない。そんなことをしたら、日本経済はまたおかしくなってしまう。金融機関関係者を入れるにしても、もう少し実体経済や中小企業経営に明るい人にすべきだ。

 こうした人事が、一定の円安圧力となることは否定しない。ただし筆者が繰り返し述べているとおり、高市政権は単純な円安政策を目指しているわけではなく、財政政策等による経済成長を優先しようとしているだけだ。この結果、需要増を背景とするディマンドプルインフレの圧力は強まるので、むしろ潜在的な利上げ余地は広がり、それは最終的に円高圧力にも繋がりうるのだ。一部審議委員が主張するようにただ単に利上げを急いでも、景気悪化で政策金利はいずれ引き下げられ、中長期で見た場合はむしろ円安が放置される結果となるだろう。

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