10月25日の産経新聞の報道によると、「日本成長戦略会議」を新設する一方で、岸田文雄氏が2021年に設置した「新しい資本主義実現会議」を廃止するという。新しい資本主義は意味がよくわからないと評されることが多いが、政府広報オンラインの「新しい資本主義の実現に向けて」によると、要するに成長と分配の好循環をもたらそうということだ。

では、岸田氏は具体的に何をしたかったのか?内閣官房の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版の概要」にざっと目を通したが、「雇用、産業、経営、技術等々、経済に関係あることは思いつくまま全部書きました」という体の内容で、極めて酷いものだ。これだけ色々書けば、そりゃあいい内容も含まれているが、焦点が全く定まっていない。
分配の改善に焦点を当てようということであれば、(筆者の意見はやや異なるものの)問題意識は必ずしも悪くない。しかし、消費税率を引き上げながら法人税率を引き下げてきたのは自公政権なわけで、既に共産党が「大企業・富裕層増税をやり、消費税率を引き下げろ」と明快な答えを出している。こんなわかりやすい話なのに、資産運用立国とかリスキリングなどとわけのわからないことを言っている。それに、仮に分配の問題を改善しても、その後で社会保険料の引き上げと増税をやるなら元の木阿弥だ。それ以前の問題として岸田氏は、そもそも分配の問題が改善してないのに子育て増税をやったわけで、論外としか言いようがない。
本当に、返す返すも岸田氏が総理大臣になったことは残念極まりない。自らが事実上後継に指名した石破氏を含め、4年間が完全に無駄になったどころか、子育て増税などの負の遺産を残してしまった。バブル崩壊後の経済情勢を丁寧に振り返り、歴代政権がどのような理由からどのような経済政策を打ち出し、その成果と問題点をどう評価するのか、当然よく考えるべきだった。岸田・石破政権は何も考えてないから、焦点のぼやけた対応しかできないのである。
筆者は高市氏が「日本成長戦略会議」で何をしようとしているのかきちんと把握しているわけではないが、当然積極財政の考え方を含むのであろう。ある意味、それだけで岸田氏の政策よりはまともであることが確定している。歳出を増やし、増税と社会保険料の引き上げは最低限に抑制するという2点が骨格になっているならばそれで十分だ。
減税はもちろんのこと、防衛費が今後増大するであろうことを前提に軍需産業振興、食糧自給の維持改善、人手不足が深刻な建設・介護分野のロボット化、自然災害の悪影響を軽減するための地方防災投資、交通インフラ建設など、おカネの使い道はいくらでもある。何におカネを使うべきかについては各人の意見が分かれるので、誰にとっても100点満点の正解はないが、政府がおカネを十分に使わないことが経済の長期低迷をもたらしているというのが筆者の見解であり、極論すれば内容など何でもいい。議論ばかりして何もやらないよりはましである。それによって財政破綻することなど、500兆円もの対外純債権を持つ日本にとっては、それこそ20年先に心配するような話である。それ以前に経常収支の黒字が30兆円もあるわけで、まずは赤字になるまで歳出を増やしてはどうか。


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