12月13日のダイヤモンドオンラインで、「高市積極財政でなぜ円高にならないのか?『マンデル=フレミングモデル』の前提と異なる日本経済の処方箋」という野口悠紀雄氏による記事が出ている。ここではマンデル=フレミングモデルについて突っ込んだ議論はしないが、野口氏自身が書いているとおり同モデルを前提とするなら「変動相場制と国際間の自由な資本移動を仮定した場合、財政政策は無効という結論が得られる」。金利が上昇して円高になり、輸出減・輸入増が起こるためだ。
だから積極財政など無効だからやるなというなら筋は通っているが、野口氏の主張は違う。現実には円高が起こっていないとして、「財政拡大がインフレ期待を高めると、名目金利は一定でも実質金利は低下し、円安圧力が強まる」ことを背景として挙げている。そしてインフレ期待が高まる理由として、「現在の日本は、供給面の厳しい制約に面している。特に労働力不足のために、需要が拡大すると物価が上昇してしまう」ことを指摘している。
要するに、供給制約があるから需要拡大政策は無効だと言っているに過ぎないのだから、わざわざマンデル=フレミングモデルを持ち出す必要はない。最初から、同氏が使うべきと主張するとおり総需要・総供給モデルで議論すればいいだけなのに、現実には最後の方でちらっと触れただけである。この方は一体、何を言いたいのだろうか?
2025年7~9月期において、上方バイアスがあるにもかかわらず需給ギャップは、内閣府の試算によると小幅ながらマイナスだ。無論、産業によっては供給制約はあるのだろうが、対米ドル為替レートの相手方となる米国は需給ギャップがそもそもプラスなのである。日本の方が供給制約は小さいとみなすのが素直な解釈であり、野口氏の主張には全く説得力がないと筆者は考える。
円が上がらないことにはいくつかの要因があるのだろうが、為替レートに大きな影響を及ぼす短期金利について、高市政権が引き上げに慎重なことが大きな要因だ。それは当面の景気拡大をしっかりしたものにするためであり、長い目で見れば、緊縮財政派の政権が続いていたよりは利上げは大幅なものとなる、というのが筆者の見解である。


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