賃上げ:自民公約は落第点、突込み不足のNHK、空虚な生産性向上を叫ぶマクロ経済学者とエコノミスト

マクロ経済

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 自民党は6月19日、7月の参院選に向けた選挙公約を発表した。この中で「強い経済、伸びる賃金」といの一番に掲げ、賃金上昇を重視していることを明らかにしている。
 中身をみると、0点だ。無論、頭の良い人たちが作ったのであろうから良いことも言っているが、過去の総括が全くできてない。私はこのブログで何度も繰り返し言っているが、経済政策を総括することは極めて重要だ。
 例えば、「2040年までにGDP1000兆円、平均所得5割以上アップ」「2030年度に賃金が約100万円増加する」と書いてある。デフレに苦しんだ安倍政権までであれば、それなりに意味のある数字だが、今はコストプッシュインフレが進行している。こんな目標は、岸田・石破無策政権のようにインフレを放置するだけでも実現するかもしれない。どうも頭の切り替えができてない、としか言いようがない。
 実質賃金を1%ずつ上昇させていくという目標は正しいが、1990年代後半以降という極めて長期にわたり、実質賃金は低下基調にある。この状況を打破する政策とは何なのか。ミクロなことを色々と書き連ねてはいるが、過去の政権だって色々とやってきたはずだ。それがなぜうまくいかなかったのか、今回の公約はなぜうまくいくと思うのか、そこが全く見えてこない。何も総括してないからだ。

 ところでさっきみたNHKニュースで、企業の株主への還元(配当金+自社株買い)がどんどん増えていることが報じられていた。これに対して、配当政策に詳しいという早稲田大学のスズキトモ教授が「もっと設備投資や従業員におカネを回すべきだ」という趣旨のコメントをしていた。この方の経歴をみると、自民党のブレーンらしい。
 スズキトモ氏の意見は別に間違っていないが、このコメントを引き出すことにどれほどの意味があったのかとは思う。NHKの突っ込み不足である。日本は国営企業だらけの旧ソ連ではないのだから、ただ設備投資やれ、賃金上げろと言ってみたところで意味はなく、税制をいじくれば多少は効果があるかもしれないが、果たしてどこまで増えるだろうか?企業は儲かると思わなければ設備投資はやらないし、人手不足が深刻にならない限り賃金上昇は最低限に抑えるのである。
 加えて、国家財政と社会保険財政の悪化→増税と社会保険の改悪→消費者の倹約姿勢加速・景気低迷長期化→国家財政と社会保険財政のさらなる悪化、という「負の無限ループ」を続けている限り、労働分配率の引き上げ等を目指して他の政策を多少いじくったところで、どうにもならないのだ。過去の実体経済や経済政策をきちんと総括すれば、そういう結論になるはずだ。

 本来、政党やオールドメディアに議論を任せるのではなく、マクロ経済学者やエコノミストこそが大所高所から賃上げを論じなければならないのだが、どうにも頼りない。実質賃金を上げるためには生産性の上昇が必要と主張をしている人が多いようだが、これは因果を間違っているのではないかと思う。賃金は労働市場がひっ迫しないと上昇しない、人口先細入りの中で賃金も振るわない経済で企業は無駄な設備投資はしない、投資が伸びなければ生産性は上昇しない、私の頭の中での整理は以上である。実質賃金が30年近くも減少傾向にある中で、それを逆転させるには何が必要なのか。答えは自明だと思うが、皆様で考えて欲しい。

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