このブログで再三述べていることの要点は、以下の2点である。他にも色々と論点はあるが、この2点さえ理解すれば十分だ。
1.政府はおカネをいくらでも作れる。今の制度では、日本銀行による国債購入がそれに該当する。政府にとり円建ての国債発行残高は、実質的に借金ではない。紙切れ(紙幣)、金属片(硬貨)ですらなく、画面に表示された純然たるただの数字である
2.それ故に重要なのは、円建ての借金たる財政赤字・政府債務残高ではなく、外貨建て借金が主となる経常収支赤字・対外純債務である
これを前提に年金財政について考えると、深刻な財源不足状態にあると思うのは間違いである。これまで日本経済を支え、世界第2位の対外純債権という偉大な遺産を残してくれた高齢者に対し、これを取り崩しながら年金を支払うというスタンスに立てば、年金改悪など全くやる必要性がない。しかし社会保障論の「専門家」たる御用学者に議論を任せると、どうしても年金だけを対象とした単なるカネの帳尻合わせとなり、社会保険改悪という結論になってしまう。この結果として、経常収支で30兆円もの黒字を出しながら、おカネが足りないと言い続けている。見るべき指標が間違っているのだ。
この結果高齢者は将来不安が消えず、おカネを使えなくなってしまった。現役世代も将来不安を前に、新NISAとiDeCoを使って倹約に励んでいる。これでは個人消費が伸びようがない。だからこそ本来、こうした視野狭窄な「専門家」ではなく、マクロ経済学者やエコノミストが大所高所から年金財政を論じなければならないのだが、彼らも「専門家」と一緒になっておカネの帳尻合わせをやっている。本当に嘆かわしいことである。
以上のストーリーについては、以前のブログでも述べた通りである。今回は別の観点から議論したい。パーソル総合研究所は2025年7月1日、「企業の60代社員の活用施策に関する調査」を発表した。執筆時点で、誰でも無料でみられるようになっている。色々と書いてあるが、50代・60代社員の過剰感が、他の年代に比べ突出して高いということが主たる調査結果である。
なぜこんなことになったのか?50・60代といえば勝ち組の人間は役員クラスになっており、残された人は出世競争に敗れた人たちだ。この調査では、50代後半と60代前半の「正社員活用の課題感」を尋ねているが、どちらも1位は「本人のモチベーション低下」、2位は「本人の生産性の低さ」であった。出世の道が断たれたばかりか、役職定年などを理由に、業務実績や本人の能力とは無関係に賃金が減り始めるからやる気がなくなり、生産性が落ちているということだろう。執筆時点で50代後半の私としても身につまされる思いだ。
会社員人生の終盤でこうなることは、ある程度仕方がない。しかし、50代後半で既にこんな状態なのに、60代前半まで何の希望もないままで働く人が多数存在するのはいかがなものか?無論全員ではないが、体がだんだんいうことをきかなくなるなか、年金が65歳まで出ないから仕方がなく働いている人も一定数いるのだ。
今、参院選を前に外国人労働者の問題がにわかにクローズアップされてきたが、この高齢労働力の問題も深刻だと個人的には思っている(無論この間、女性の労働参加も促されてきた)。働きたくないのに低賃金で働かされる一方で、賃金水準全体を押し下げる要因になっており他の年齢階層にも迷惑が及んでいる。しかも、やる気のない高齢者がいつまでも居座っている、とも思われながら。誰も幸せになれない制度だ。年金財政が深刻な状況にあるという錯覚の元、年金改悪と定年引上げをやってきた結末が、30年近くにも及ぶ実質賃金の低下なのである。自民党と「専門家」のせいでこんな世の中になってしまった。
企業はどう考えているだろうか?一見すると要らない雇用を押し付けられているようにみえるが、60歳でいったん定年を迎えさせ、やる気があり有能な社員は安い賃金で継続雇用でき、そうでない社員には思いっきり低い賃金を提示して退職に追い込めるかもしれないという側面もあるので、一概に何とも言えない。
60歳以上の人材需要が実質的には少ない中では、年金支給開始は60歳のままで、後は市場に任せれば良かったのだ。さすれば、企業は残って欲しい社員には好待遇で継続雇用し、そうでない社員はそのまま引退してもらえる。60歳以上の労働力が過剰になることなどなかったのだ。どうしても労働力が足りない企業は、高賃金を提示して、高齢者に職場に戻ってもらえばいい。仕事に慣れた高齢者が戦力に加わることで、若手も中堅も喜ぶことになるだろう。この展開であれば誰も不幸にならずに済んだのである。繰り返すが、こうならなかったのは全部自民党と「専門家」のせいだ。
本業を別に抱えていることもありなかなかブログを書けないが、今後は変な年金論を語る「専門家」については、実名を挙げて批判的に取り上げていきたいと考えている。


コメント