悪影響に触れない利上げ論は問題外(2)

マクロ経済(基礎編)

 前回のブログでは、利上げは雇用と賃金に悪影響を与えると述べた。だから、現下の経済環境がそれを正当化する状況にあるのかが問われるわけだ。一方で国民は、円高によるインフレ抑制を求めている。気持ちはわかるが、前回述べたとおり単純な利上げは悪手であると筆者は考える。

 さて一般国民はともかくとして、市場関係者と称する人々は、そもそもインフレには全く触れずに利上げを求めたり、あるいは当然のこととしてその時期を予測したりしている。市場関係者というプロが言うことだから、当然の共通認識はいちいち言及しないということなのだろうが、利上げという結論よりもマクロ経済の現状認識こそが何よりも重要だから是非ともいちいち言及して欲しい。
 筆者はインフレそのものよりも、インフレを踏まえた上で実質賃金の増加を目標にすべきだと言ってきた。2024年春先までは日本銀行も実質賃金を重視していたはずだったのに、いつの間にか雲散霧消してしまった。皆様はいかがお考えだろうか。

 では市場関係者たちは、何故にこうまで利上げが好きなのだろうか?経済に対する考え方が筆者と全く異なっている人も一定数は居るだろう。インフレ目標至上主義の元で、CPIのデータと要人発言をひたすらフォローしているようなケースだ。こういう方々はもう少し柔軟性をもって頂きたいと思う。

 しかし、おそらく大部分の人はそうではない。以前から高橋洋一氏が明確に理由を述べており、日銀当座預金残高に金利が付くからだと思われる。付利の対象となる当座預金残高は2025年7月時点で504兆円あるから、単純に政策金利の0.5%をかけると1年に2.5兆円になる。この利息は日本銀行が払うのだから全くの無リスクだ。マイナス金利が導入されていた時代と比べると天国のような状況である。また金利が上がると、長らく低迷してきた短期金融市場が活性化し、収益機会が増えるという側面もあるかもしれない。

 利上げは、金融機関の本業たる民間への貸し出しから得られる金利収入が増加する要因ともなり得る。ただし融資先のかなりの部分を占める中小企業は、利上げすると倒産リスクが高まる。業況が好調であれば受取利息が増えるだけだが、そうでないなら貸し倒れ損失の増加幅の方が大きいかもしれない。現下の経済環境においてどちらの結果となるかは、正直わからない。ちなみに、6月日銀短観の中小企業業況判断D.I.は、製造業が+1だから良くも悪くもない状態、インバウンド景気のためか非製造業は+15とそこそこ良い景況感となっている。
 金融機関目線から離れると、金利上昇は中小企業の設備投資や賃上げの余力を削ぐものであり、実質賃金が減少している今、利上げは急ぐべきでないというのが筆者の見解である。日本銀行から無リスクのおカネをもらえるのは、金融機関の関係者にとりありがたい話であることは確かだが、やはり日本経済が全体として活性化して中小企業がしっかり育ち、その分け前として金利を頂くのが金融機関の本分であろうとも思う。

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