生産性に関する議論(3)地獄の苦しみを味わった氷河期世代

マクロ経済(基礎編)

 第2回では筆者の主張のコアともいうべき論点、すなわち需要不足下で生産性を高めることの愚かしさを指摘した。今回はまず、第1回で紹介したTFP(全要素生産性)の、指数関数を用いない簡易的な数式を振り返ってみたい。

 生産増加率=労働投入増加率+資本投入増加率+TFP増加率
∴TFP増加率=生産増加率-労働投入増加率-資本投入増加率

 この式の意味するところは、初めに生産増加という結果があって、その要因分解を事後的にしてみました、ということである。そして、労働と資本の増加で説明できない部分をTFPと呼んでいるに過ぎない。すなわち「TFPが上がれば生産は増える」という因果関係を示しているわけではない。需要不足の場合には生産性を上げる努力をしても仕方ないとの思いに、名だたる経済学者やエコノミストの大部分が至らないというのはどうにも腑に落ちない。しかも実際問題として、内閣府によると2025年4~6月期の需給ギャップはいまだに0近傍であり、また実質賃金もマイナスが続いているのだ。

 失われた30年間、自己啓発等を通じて労働者も色々と「生産性を上げる努力」をしてきたと思うが、根本的に人手があまっていたから、賃金はろくに上がらなかった。低賃金のままなのに、勝手に労働者が勉強してくれたから、経営者が喜ぶだけの結果に終わった。とりわけ氷河期世代は苦しい思いをしたはずだ。どんなに努力しても、賃金が低いのは自己責任だと突き放されてきた。資格試験に合格しても、たいして賃金は上がらなかった。まさに地獄の苦しみである。これはすべて、需要を拡大せずに労働者に対し一方的に生産性上昇を求めてきた自公政権に責任がある。

 こんな状況であるにもかかわらず、2022年に当時の岸田総理大臣は、さらにリスキリングの制度拡充を言い出した。まだそんなことを言っているのか、これ以上労働者を苦しめてどうするのか、という思いだ。仮に超難関資格に合格しても、現下の経済環境においては、その努力に見合った年収を得られるか疑問である。
 まずは賃金が上がる経済を実現することが重要で、賃金が上がるとわかれば労働者は勝手に勉強するものだ。ところが、実質賃金を下げ続けながら、政府が支援してやるからお前ら労働者は自己責任で頑張れと、岸田氏は言っているのである。何をかいわんやだ。経営者に阿るのもたいがいにせよと言いたい。

(4)に続く。

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