過去のブログである「悪影響に触れない利上げ論は問題外(1)」と「(2)」を振り返ってみると、要点は「利上げで得する金融機関の市場関係者などは黙ってるけど、中小企業の利益やGDPは減るんだよ」ということだった。私自身は当たり前のことを言っているつもりなのだが、オールドメディアがきちんと説明しないせいか、こういうことを言う人は少数派になってしまっている印象がある。コストプッシュインフレ下の金融政策のあり方を一般有権者が考えるのは平時と違ってなかなか難しい、というのはそのとおりなのだが、利上げは景気を悪化させるというシンプルな事実だけは是非押さえて欲しい。
さて本日(9月13日)の時事通信の報道で、「米、円安・ドル高へくぎ刺す 為替政策で日本に 共同声明」という時事通信の記事が載った。加藤勝信財務大臣とベセント財務長官の共同声明で財政・金融政策を「競争上の目的のために為替レートを目標とはしない」こととしたという。これはどのように解釈すべきか?筆者は外交の裏事情までは無論わからないが、時事通信の解釈にはあまり賛成できない。
(1)時事通信の解釈:「日本がアメリカに押し切られた」
この記事には、以下の3点が引用されている。
①トランプ大統領は日本に対し「いつも通貨安を望んでおり、今もそうしようとしている」などと批判を繰り返してきた
②米財務省が6月に公表した半期為替報告書では、日銀の金融引き締めの継続が「ドルに対する円安の正常化を後押しする」と指摘
③ベセント氏は8月の米通信社のインタビューで、日銀の利上げが「後手に回っている」とも述べていた
トランプ大統領は円安そのものを問題視し、米財務省は円安解消のための利上げを求めてきた、と解釈できる。時事通信は、日本の利上げが遅い(アメリカの見方であり、筆者は早過ぎると考えている)、円安維持が目標であれば許さんぞとくぎを刺した、という論理で押し切ったと解釈したのだろう。
しかし、この見方はあまりに表面的だ。
(2)筆者には日本がアメリカを押し切ったようにしか見えない
共同声明がいうところの財政政策が、財務省による市場介入を指すのであれば「円売りドル買い介入をやるな」ということでわかりやすい。しかし日本は2024年にむしろ円買い介入をやったのであり、円安の悪影響の方が強く認識されている状況である。遠い将来はともかく、輸出を伸ばすための円売り介入などやるわけがない。つまり全く意味がない文言だ。
金融政策の方はどうだろうか?金融政策は物価目標を念頭にやっているのであって、アメリカにどうこう言われる筋合いはない。「物価ではなく、実は円安維持を目標としているのではないか?」とアメリカ側が疑っていたとしても、それを証明する手段はない。日米金利差を縮めたいならば、アメリカが勝手に利下げをすればいいのであって、日本に利上げを指示するなどお門違いである。
つまり財政政策・金融政策とも、全く無意味な声明である。アメリカは日本に利上げさせたいのに、共同声明が骨抜きになったのだとすれば、むしろ日本サイドの外交的な勝利だ。加藤大臣はよくやったという結論にしかならない。
(3)アメリカを押し切っても国益になっていない愚かしさ
とはいえ、そもそも日本は円高を求めているのではなかったのか?同時にアメリカが円高を求めているのだとすれば、本来両者の利害は一致しているはずだ。
つまり日本が金利を上げなくとも、円安が行き過ぎだとして円買いドル売りの日米協調介入を実施すれば、それなりにインパクトがあったはずだ。まさに、一時話題になった「第二のプラザ合意」である。利上げせずに円高になるシナリオを、加藤大臣は自ら放棄したようにしか見えない。
今回の件、皆さまはどう思われるだろうか?例の80兆円の対米投資の件を含め、これでは自公政権が輸出企業に阿っているようにしか見えない。あるいは、輸出企業主導の株高を崩したくない勢力がいるのか?筆者のような視点で加藤大臣を追求している議論があまり見られないのは残念だ。


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